7/7 そいつの笑い声は、ガハハ、と家中を駆け回るみたいに、大きく強く跳ねて。 そいつの泣き声は、それこそ、家が壊れるんじゃないかってくらい大きく空気を揺らして。 周りの人間を困らせては、笑って、笑って。 どんなところでも、どんなときでも、纏わりついて離れなくて。 成長して、すらりとした手足と、女受けのする甘い顔を手に入れても、涙もろいのは変わらずに、気付くといつだって涙目で膝をかかえていた。 俺のことをひどい人間だと言っては泣き、愛してると言っては、また、泣く。 あんまりずっと一緒にいたものだから、いなくなったことにすら気付けずにいたのだなんて。 「あのこはどこへいったのだろう。」 暗い部屋の中で、そっと、抱きしめた黒髪は、真っ直ぐ伸び。 呟かれた言葉に、つ、と眉をあげる。 「どうした?」 こちらを覗きこむ瞳も漆黒の色。 不安に揺れた緑をやっと思い出して、緩く首を振る。 「なんでも、ないよ。」 開かれた窓から、柔らかな風が吹き、軽くカーテンを押し上げる。 ひらり、と、軽く、軽く。 ゆるゆると伸ばした腕を掴み、鋭くこちらを見つめる漆黒の少年に笑う。 「なあ、どこへ行ってしまったんだろう。」 本当に困ったやつだけど。 鬱陶しいと思うばかりだったけれど。 臆病な子だったんだ。 本当に、臆病な子供。 大人になった俺の愛しい子。 大声で泣いて、大声で笑って。 どうぞ、しあわせに。 どうか、しあわせに。 |
7.7 エノテラ 新しい恋人、自由な心